不器用な君と不機嫌な私



「ここが、郁のお家!」


玄関の前に立つと、郁が楽しそうにそう言った。


はずなんだけど


どうしてだろう、この前のように

目が笑っていないような気がして。


郁の家はマンションの一室で

一戸建てに住む私には

オートロックとかが新鮮だった。


「…お邪魔します」



「あははっ
誰もいないよーっ?」


「あ、そうなんだ。
お母さんも仕事?」


「…んっとね、パパとママは

少し遠いとこに行ってるの」


出張とかなのかな


そう思ってそれ以上は聞かなかった。


そしてリビングに入って

思わず息を飲む。