しかし、フェンは知った。
それを最初に教えてくれたのは師匠だった。
抜け道はある。
それを使うのに、今の状態は最高と言えた。
「試してみればいい。ぼく……フェンはティーの騎士として君に仕える」
「承諾、する……え?嘘だろ?どうして……」
フェンの本名を名乗らないを誓いを半ば冗談のつもりで受け入れたティーは、その契約が成立したことにうろたえた。
「たしかに、ぼくには他に本名といえる名がある。精霊と契約を交わした名が。だけど、『君の騎士となるぼく』の本名も確かにあるんだ。その二人は違うとぼくが認め、そう認識する他人がいて、ぼくが名乗ったぼくの名を『ぼくの名前』と認識した人がいる。そして、結界が修復されるとき、ぼくがぼくであることを放棄し、元のぼくに戻るだけで、ぼくは騎士ではなくなるんだ」
つまり、騎士になるのはランジエと契約した少女、リーフェンリア=シャルではなく、契約者でもある少年、フェンなのだ。
……師匠が最後に、フェンと旅した自分はダンテではなく、『フェンの師匠』であると言ったように。
『フェンとして』、騎士になる。
それがフェンの決断だった。