君 距 離 〜キミキョリ〜




ワタシは怒りと不安で声が震えていた。


「…ふざけないでよっ!!!」

「加…奈…?」

「咲子の彼氏でしょ!?
好きなら好きでいいって何!?」

「待って…!」

「余裕ぶらないでよ!!
…ワタシが…、ワタシがどんな思いで隠してきたか分かるっ!?
…分かるわけないよね」

「加奈…」

「咲子がそんな子だったなんて思わなかった。
ワタシは、咲子と拓真が付き合い始めてから諦めてたのに…」

「…嘘つき」

「え?」

「そんなの嘘。
実際に、まだ好きじゃん!!!
正々堂々と戦おうよ!!」

「ワタシは、咲子と拓真の幸せを願ってた」

「嘘。
ただ、戦うことが怖かっただけなんじゃないの!?
人の幸せを願ってるなんて、自分が幸せじゃなかったら願えないよ。
加奈なんか知らない」


咲子は立ち上がり、暗闇に消えた。