坂道を勢いよく走り降りる自転車。

 風になびいてる柔らかそうな、長い髪。

 華奢な後姿はすぐに見えなくなった。

 呆然と、見送るおれ。

 公園の入口、立ち尽くすおれの目の前をはらはらと桜の花びらが舞った。



 いつも、いつも、にげるんだ、陽菜は!



「くそ! ぜったい、つかまえてやる!」



 宣言して、駆け出すおれの名前は、海老原光。

 そして、卑怯にも自転車なんかに乗って逃げていったのは、福田陽菜。



 おれはいつも、陽菜を追いかけて、そして陽菜はいつも、おれから逃げるんだ。



 やっと・・・同じ場所に立てたと思ったのに・・・。