キス寸前までいったことで、俺自身が今まで以上に蜂谷を意識しているのもあるが。

それよりも、笹倉さんから聞いた“女子たちの事情”がいちばんの要因だ。

ほんとうに女ってヤツは恐ろしい生き物だと思った。



もしもうまくいったら蜂谷のことを守れよ、なんてことを笹倉さんは言ったけれど。

この世界で、四六時中、蜂谷に張り付いているわけにはいかない。

それこそ変態だの、ストーカーだのと大騒ぎになってしまう。




「おまえもさ、新しい恋をしろよ、なっ?」




机に突っ伏す俺の肩を、励ますかのように慶太が叩く。



朝から降り続いている雨のおかげで湿気を帯びた空気がからだじゅうに纏わりついている。

そのせいか、肩に置かれた慶太の手がやたら重く感じた。