全速力で突っ走って、「麻友」と声をかけたいのに。
俺の足はそれを拒否する。
ゆっくり、ゆっくり、後ろ姿を見せている麻友に向かって歩き始める。
麻友が俺のほうを振り返ればいいのに。
その瞬間に、時間が止まればいいのに。
そうすれば俺たちは“終わり”を迎えなくてすむ。
俺は麻友の顔を見たまま、ここに留まることができるのに。
「カヤ様」
麻友の背中がすぐ目の前にきたところで、俺たちは歩く足を止め、律が最初に声をかけた。
突然声をかけられた麻友の肩が小さく跳ね、そして、ゆっくりと振り返る。
「……麻友」


