麻友に悟られないように、小さく小さく、深呼吸をする。 そして、まるで繊細なガラス細工を抱きしめるかのように、そっと、静かに麻友の背中に両腕を回した。 ふわりと漂う、麻友の匂い。 とても、とても、懐かしい匂い。 “カヤ”を思い出す。 同時に、麻友をとてつもなく愛しく感じる。 何か喋ればいいのに。 俺も麻友も固く口を閉ざしたまま、言葉ひとつこぼさなかった。 「………麻友?」 俺に最初の言葉をこぼさせたのは、麻友のすすり泣く声だった。 「なに泣いてんだよ」