「蜂谷を忘れられないんなら、それでいいんじゃね?」
頭上から降り注ぐ優しい声に、言い知れぬ感情が胸の奥から沸き起こってくる。
その感情の名前を、俺はなんて呼んだらいいのか分からない。
咄嗟に慶太から視線を外し、両手で抱えていた膝に顔を埋める。
「――だからさ。これ以上、自分を落とすようなことはするな」
「………っ」
両膝のあいだから見える、薄い灰色のアスファルト。
ぽたりぽたり、と、涙が落ちたところだけが濃くなっていく。
「俺、教室戻るわ」
屋上に俺を残して先に教室に帰るのは、慶太の優しさだ。
涙を見られたくない気持ちをじゅうぶんに理解している、俺の親友。
――きっと、俺は来世でも慶太のことを忘れないだろう。


