「俺、帰るわ」 平静を装いながら立ち上がり、バッグをたすき掛けする。 「おう、気をつけて帰れよ」 「………」 「じゃあね、小林くん」 「………」 挨拶もせずに、急ぎ足で蜂谷の家を出た。 ……俺、すっげーバカ? 笹倉さんの“蜂谷は磯辺のことを本当は好きじゃないような気がする”って言葉を真に受けて。 時折見せた蜂谷の変化に期待なんかして。