蜂谷の口を塞いだままの手のひらが、しだいに熱を帯びてくる。
俺のからだの温度と、蜂谷の呼吸の湿度で、その部分だけがとても熱い。
「………?」
階段を上がる音から、再び歩く音へと変わった。
徐々に遠ざかる足音は、この階から聞こえてくる音ではなかった。
「ちがった……」
はぁ、と深い息を吐くと、蜂谷が口を塞ぎっぱなしだった俺の手を引き剥がした。
「あんたねぇ、いきなり塞がないでくれる? 酸素薄すぎて死ぬかと思ったし!」
小さな声でキーキー文句を言う蜂谷に、俺は真顔で言ってみる。
「……それ以上喋ると、今度は手じゃなくて口で塞ぐぞ」


