騒ぎを聞いて駆けつけたマティルダの母親が、すぐにヴェラを病院へと連れて行ってくれた。
マティルダはきっと、こんな事態になるとは思ってもいなかったのだろう。
怒りにまかせ冷静さを失っていたマティルダは、ヴェラたちが病院に行ったあと、その場に泣き崩れてしまった。
「せんせ……」
「……すまない、マティルダ。僕も病院に行くよ」
マティルダに対して、憎しみの感情が沸き起こっているのを感じた。
どうして、こんなに酷いことをするんだ。
“つい”なんて言葉じゃ済まされない。
だけど――……
パリ音楽院の現実を教えなかったこと。
無理やりにでも、ヴェラを家に帰さなかったこと。
本当に酷いのは、この僕だ。


