マティルダとヴェラ。
2人の技量は同等だ。
同じパリ音楽院を受けるという2人に対して、僕はちがう答えを用意しなければならない。
マティルダには「大丈夫、頑張れ」と背中を押す。
ヴェラに対しては……背中を押すことができなかった。
「そういえば、ヴェラもパリ音楽院を受けるって言ってたわね」
ふと、ピアノを弾く指を休め、マティルダが思い出したように言った。
マティルダとヴェラは家が近いということと、僕の教え子ということで少なからず交流がある。
しかし、ヴェラとマティルダ、互いがそれぞれのことを話すときの様子から、2人の仲がたいして良くもないことは分かっていた。
マティルダは、いつものように鼻で笑いながら言葉を続ける。


