「びっくりしたー。小林くんじゃないの! どうしたの?」
週に1度しかない音楽の授業。
それなのに山田先生は全生徒の顔と名前をちゃんと覚えているし、気さくに話しかけてくれるから生徒に人気がある。
「いや、ピアノの曲が聴こえてきたんで」
グランドピアノのそばに近寄ってみると、流れている曲が生演奏ではなく、ただのレコードであったことに気づいた。
「ちょっと弾いてもいいですか?」
知っているピアノ曲を聴くと、つい自分でも弾きたくなってしまうクセは昔から直らない。
いいわよ、と快諾してくれた山田先生に礼を言うと、グランドピアノのフタを開け、ゆっくりとイスに腰掛けた。


