律が描いた当時の風景は完璧だった。
小高い丘に建てられた主祭殿と、その真下に広がる果樹林と民衆の集落。
そこを進んでいくと、木々に囲まれた小さな池があった。
俺とカヤは、木々に隠れた池でいつも会っていた。
池のまわりを取り囲んでいた乳白色の小石さえも、律はしっかりと描いている。
「……タスク。わたしがカヤだってこと、信じてくれるよね?」
あの頃の風景を正確に描いたうえに、当時の俺たちのことさえも記憶している。
さらに、右の手のひらにあるアザ。
ここまで揃っているのだから、カヤが“蜂谷麻友”ではなく、“立花 律”として生まれ変わったことは疑いようのない事実だ。
それなのに――
どうしてこんなにも、胸のあたりが落ち着かないんだろう。


