「まさか。まぁだ看板の形をどうするかでモメてんだよ」


「え、じゃあ何でペンキ?」


「ペンキ持ってプレッシャーかけんだよ。さっさと決めろよボケ! ってな」




……慶太の無言のプレッシャーほど恐ろしいものはない。

きっとハケなんかでペンキの缶をカンカン叩きながら、イラついた態度を取ってみせるんだろうな。




「あれー、瑠衣くんー」




絵の具やニスの独特の匂いに包まれた美術室。

引き戸を開けると、聞き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。




「……笹倉さん」