((さっきの痛さがウソのよう。
歴代のお姫様ってみんなこんなつらいことに耐えてきたのかな。
あれ、でも目の前が暗い?))


小夜は左右に頭を動かしてみた。


「あ、気がついたんですね。でも・・・」



「わっ!もしかして私、阿狼さんに抱きついて寝てた?
暗いと思ったら腕の中で目の前が胸!・・・む、ね?」



阿狼の腕をかいくぐるようにして頭を明るいところに出してみると、人間に化身した阿狼に似ているが瞳が深いブルーをした男の顔があった。


「阿狼さんの目が・・・目の色が・・・銀色じゃない・・・」



「そう。私はもう銀狼じゃなくなってしまったのです。
もう後戻りはできない。
あ、これは後悔とかじゃないですからね。

自分で望んでしたことに後悔はしない。けど、小夜さんよりも変化したことが大きすぎて感想も言えやしない・・・。
とくに人間となって裸のあなたと触れてしまうとこんなに胸が熱くなるなんて予想もしなかったから・・・すみません、顔洗ってきます。」



化身のときには見たこともなかった阿狼の照れた顔に小夜は思わず笑顔になってしまった。

「かわいい・・・。
阿狼さんは私と同じ人間で王族になってくれたんだわ。」




ガシャーーーーーーーーン!!!!




「きゃあああああああ!」


小夜がベッドの上でシーツにくるまっているところに、突然大きな蛇が飛び込んできた。

大蛇は小夜の体の周りをぐるぐると巻きつくと忽然とその場から姿を消した。



小夜の叫び声をきいた阿狼がもどったときには寝室が荒れ放題になったまま小夜の姿がなくなっていた。