小夜は自分でもすごいことを言ってしまったと思っていた。
頭に押し寄せてきて吸収されてしまった記憶のせいなのか、それとも自分の心に封印されていた熱いものがはじけてしまったのか、生きた時間も少ないルナドルートのことをここまで大切に思うのはどうしてなのだろう。
「あの、阿狼さん。
私のこと姫様と呼ぶのはやめてください。」
「しかし・・・。」
「クラスの子にきいたんですけど、阿狼さんの追っかけさんは多いんですって。
どこで誰が見てるかわかりません。
今だって私がここに阿狼さんといるだけで、妬まれたり、いじめられるのは私はイヤです。」
「そ、そんなことは。」
「あるんですっ!
私、いじめられたことあるから・・・。
生徒会役員でもないのに、ここにきて阿狼さんと話すのは不自然ですよ。」
「なるほど。
じゃ、書記として任命します。
それから、あなたのことは何とお呼びしたら・・・」
「長浜くんとか小夜ちゃんとか、そこらが学園もののお約束でしょ?」
「な、なるほど・・・。くくく。」
((あ、笑った。なんか冷たい空気が消え去ったみたいな笑顔だ。))
「じゃ、これからよろしく頼むね。
小夜ちゃん。これでいいですか?」
「はい!」

