歴史書によると、神の暴走と破壊神の怒りは太古の昔からあったことだが、一定の期間がたてば世は静かさをとりもどし、再生へと向かっていくという。
破壊されるときには必ず王族には血を受け継ぐ女の子が存在し、その姫が婿をとって世界をつなぐというのが常だった。
狼の妖怪の一族は、すばやい危険予測と行動力をいかして、姫を安全な地へと導くことを任務としていた。
一定の期間は過ぎ、再生されるこの時期に、魔物が数は少ないもののまだ暴れているのは姫のふるさとにふさわしくはなく、かといって狼の一族たちも魔物1体ずつと戦っていけば一族がすべて滅ぶことにもなりかねない状況に陥っているとのことだった。
「姫様には大変申し訳ないことなのですが、私たち狼とそれに協力する妖怪や妖精に力をお貸しいただきたいのです。
私とときどき、この学校の裏庭の結界出口からルナドルートへ出向き魔物退治と調査に出かけていただきたいのです。
姫の能力をもってすれば、世界再生が始まらない原因もわかるかと思われます。
危険を伴いますが、そこは私たち一族が命にかえてもお守りいたしますので。」
「あの・・・会長さん。」
「2人で話すときは阿狼とお呼びください。」
「阿狼さん、事情はわかりましたし、記憶はまだすべてはもどっていないみたいですが、私にできることをするつもりでいます。
怖いのに、やらなきゃいけない気持ちが抑えられずにいます。
きっとこれが王族の血のせいなんじゃないかと思うんです。
それで私はこれからルナドルートに行くんですよね。」
「なっ・・・。姫様。
((記憶の封印を少し解いただけというのに、この使命感、このやる気のような気迫のようなものは何だ?
そりゃ、嫌だといわれるよりは頼もしいというものだが、ここまでやる気を出されても不安になる。))
姫様はこの地に引っ越してきたばかりです。
そこまであせらなくとも大丈夫。
ルナドルートの時間はこちらの世界より動きが遅いので、まずはお力を蓄えることが重要だと思います。」

