小夜は市狼に担がれたのだとわかって、泣きだしてしまった。



「私はのぞきのできる指輪でもよかったかな。
小夜さんのすべてを見てもいいなら。

す、すみません。けど・・・市狼のやつ、なんて説明してくれたんだ。
渡した時にきちんと説明しておくべきでした。

説明・・・私はほんとに融通がきかなくてダメです。
こんなことでしか、許しを請うことができない。」



阿狼は小夜の頭の後ろに手をまわして、唇にキスをする。


小夜は目をこすりながらうれしそうに笑った。



「日中の相楽先輩には応援だけします。
でも今、私の前にいるあなたは私専用です!お返事は?」



「はい。仰せのままに。
そんなに待っていてくれたなんて、うれしいなぁ。
何かサプライズなプレゼントでもしましょう。
楽しみにしていてください。」



小夜は阿狼の言葉などほとんど耳に入っていなかった。


優しい目とお互いの温もりを感じているだけで、胸の鼓動がはげしくなってしまう。


言ってやりたいことはいろいろあったのに、言葉を言う前にすがりついてしまうのだった。


母親に呼ばれて、部屋にもどった後も、ずっと小夜の体は熱をおびてなかなか眠れなかった。



((こんなにうれしいなんて・・・。ほしいなんて。
私ってこんなこと考えちゃうコだった?

うん。誰にも渡さない。))



そして翌朝すぐに父から電話があり、母はいちだんとはりきってお弁当作りに夢中だった。
あきれ顔の小夜はさっさと登校するしかなかった。