小夜の心が現実に引き戻されると、涙をポロポロ流す自分の顔に気がついた。


「私は・・・・・。
そして、あなたはオオカミさん?」



「はい。大変ご無沙汰いたしておりました。
姫のこちらでの里親様はとてもいい教育をなさったようだ。」



「でも・・・まだ信じられません。
私はお母さんの療養のためにこの土地に来たんです。
それなのに、どうして?
お母さんはほんとのお母さんじゃない?」



「あなたはこの世界にも通じる人間です。
ただし、住む世界が変われば、あなたは妖精や妖怪とも対話できます。
そして、ときには生き物の魂とも意思を通じ合わせることができるのです。

それがルナドルートの王族の力です。」



「王族って・・・私が姫なら、私の兄弟は?
両親は爆発に巻き込まれて亡くなった記憶があるけれど、兄は?弟は?」



「残念ながら・・・」



「そ、そんな。敵はそんなに強大だったの。」



「敵は・・・言いにくいのですが、あなたのご兄弟を中心とした魔物軍団です。」



「魔物って!それも兄と弟が首謀者?
あっ・・・うううう・・・・頭が痛い。」



小夜がそれからまた思い出したのは、両親を殺す魔物の後ろで高笑いする兄弟の姿だった。

当時、兄と弟には恋人がいて、それぞれの恋人が嫁いで妃となったあかつきには世界は安泰となる予定だった。

しかし、恋人たちの正体は破壊神の娘たちであった。
国の伝説にもある、300年に1度の神の暴走。

たくさんの犠牲のもとに新しい世の中がまた再生される。
その歴史を繰り返してきた。



しかし、今回はなぜか美しく再生されていないと阿狼は言う。
暴れている魔物たちが完全に動きを止めないらしい。