阿狼は小夜に少し支えてもらいながら、アパートにもどるのだった。


紫音は2人に背を向け、歩き始める。

「姫、また近いうちに会うと思うけど、よろしくな。」



アパートにもどった阿狼は小夜に傷を治さないように強く言った。

「私がつけてしまった傷なんだから、遠慮しないで。」

小夜も自分の力を制御できない状況から、つい大声になった。


「怪我の治癒は妖精が帰り道に呪文をかけていってくれたから、もう少ししたら痛くなくなります。
もう、大丈夫です。小夜さんの言いたいこともわかりましたし、お母さんのところへもどってあげてください。」



「嫌です。私は加害者のまま帰りたくなんてない・・・。」



「加害者だなんて言ってません。
早く帰ってくれないと、今日の私は嫉妬で狂ってしまったから、あなたを・・・。
えっ!?!?!?!?」


小夜は玄関を開けて大きく息を吸ってから、阿狼の前に走ってきて、阿狼の口の中にフゥーーーーーッと吐きだした。



阿狼は目を閉じて小夜にされるがままになるしかない状況だった。


((小夜さんの息が入ると体が熱くなる・・・。
なんだ、この気持ちは。
傷の痛みもない。ただひたすら、心地よく、もっとほしくなる。
そうか・・・紫音はこの効果で。))


小夜は数回、阿狼の唇に自分の唇を押しつけた。
もちろん、紫音にはそんなことはしていなかったが。




「ごめんなさい。」
そう言って小夜が阿狼から離れようとしたとき、阿狼が今度は口を開いた。



「私にもごめんなさいを言わせてくれませんか?」