阿狼の言葉に何の事だか戸惑うばかりの小夜だった。

笑顔のない顔・・・かといって怒っているでもなさそうで・・・そしてときどき眼が冷たく光る感じがするのは気のせいなのだろうか?



小夜は少し怯えたように質問で返した。


「あの・・・私、何か不都合なことでもしてしまったんでしょうか?」



阿狼は小夜の前に立ちはだかると他のメンバーに目で合図したようで、すぐに2人きりの状態になった。




「えっ・・・?」



「今こそ、消された記憶を呼び覚ましましょう。」



阿狼はそういい終わるとすぐに、小夜の頭を両手ではさみこみ、唇を小夜の唇に押し当て息を吹き込んだ。


「うっ・・・嫌だ。何!頭の中が・・・白くなる。気持ち悪い・・・。
誰か・・・助けて。な・・・何?何か見えて来た。」




小夜が見たものは田舎というより、自然豊富な西洋の風景と言った方がいいのか。
緑豊かな村のあちこちで爆発が起こる光景だった。

人々が逃げまどい、人ではない動物?見たこともないような光る生き物たちも逃げ回っている。



小高い丘の切り株の側で銀色の狼が3才に満たないくらいの小さな女の子に伝える。

「姫はこの穴から逃げるのです。
そうすれば守り木の魔法で安全な世界へと逃げられます。」



「おとうしゃん死んじゃった。おかあしゃんも死んじゃった。
さよ・・・ひとりでどうすればいいの?
ひとりは嫌だよ。助けて。」



「姫はひとりではありません。必ず、私たちがお迎えにまいります。
絶対お約束しますから、今だけの我慢をしてください。
姫はこの世界になくてはならないお方。
私たち妖怪や妖精にとって唯一の大きな味方。
いってらっしゃい。遠くに・・・なるだけ遠くに逃げて。」