大した距離なんか、走ってないのに。 「…菜摘は、可愛くてズルいよ。」 すぐに息を切らしちゃうぐらい、か弱くて。 やむを得ずやってしまったことなのに、周りが見えなくなるぐらい、傷ついて。 それぐらい、大介くんのことが大好きで。 『そんなことないよ…。』 そんな芽衣の方が、私よりも何百倍も可愛いじゃない。 「…そんなこと…っ、あるもん…!」 背中を向けていた芽衣が、ふいに私に正面になるように振り向く。 芽衣の目からは、ポロポロと涙が零れていた。