今日の俺は殊更に気分が悪い。と言うよりも廃れている、と言った方が正しいだろうか。


それは先日発覚した留年のせいでもなければ二日酔いのせいでもないし、ましてや麻雀に負けたせいでもない。



母親が死んだせいだ。



三週間ほど前の話で、それをつい先程知った。


母親の死を知る前、俺はいつもの奴等と雀卓を囲んでいた。

前日の昼間から今し方、徹夜で麻雀をやっていた。


例により安酒と煙草を喰らいながら。


部屋には独特の蒸れた様な男臭、鼻の奥をくすぐる酒の匂い。加えて煙草の煙が室内を霧の如く漂い、えも言えぬ空間を作りだしていた。


腹に空を覚えた俺は部屋主に食物を乞う。主は台所にある段ボール箱から好きな物を取って食べるよう俺に言った。


段ボール箱を物色すると中には即席麺やら果物があった。俺は即席麺に手を伸ばしたが、ふと目の前に広がる調理場の惨事を見て諦めた。そして林檎をひとつ手に取り、食物の隙間に埋め込まれた新聞紙でゴシゴシと擦り、一口被りついた。