両手はいつの間にか掴まれていて動かない。

それに加えてあたしは――すでに、諦めを感じていた。


この香に、ファーストキスを奪われた……。

それなら後二回も三回も、変わらないだろう……と。


その距離は、0になった――。


「俺が何度アピったって、お前は気付かない」

「……」

「俺だけがこの気持ちに苦しんで、お前は……いつも秋継を見てる」


え……?


「功、知って……?」

「お前が好きだからキスした。お前が欲しいからキスした。お前を誰にも渡したくなくて――」


パンッ...


自分でも気付かないうちに、手が出ていた。

右手がヒリヒリする。

人の頬を手のひらで叩いたのは、初めてだった。


「……知ってたのに、キスしたの?」

「……」