功がキスしてきた理由がよくわからないけど、でも、可能性だって十分ある。

今のあたしには一大事過ぎて、心に余裕がなかった。


「……雪那、気付いてないの?」

「なに……?」


気付く……?

はっ!

まさか、キスのこと――?


「チッ」


舌打ちの後、優しく肩を押される。

壁際にいたらしく、すぐに背中に冷たい感触。

さっきよりもグッと近づいた距離。

怖いくらいに真剣な、瞳……。


脳が信号を送る。

『危ない』って。


「お前さ、鈍感だし、隙ありすぎだし、どうしようもねぇな」

「こう……?」


顔が近付いてくる。

ゆっくりだけど、確実に。

あたしの……唇をめがけて……。