本当に美味しそうに林檎飴を食べる樹里を横目に、また歩いて屋台を見てまわる私たち。だけれど……。


「さっきより人が多いから、はぐれないようにしないとねっ!……って、あれ?樹里?!」


 人混みの中、横にいたはずの樹里がいないことに気が付き、私は辺りを見渡した。けれど姿が見当たらない。

 食べ物の屋台を見つけて、私を置いて走っていったのかな?それともはぐれちゃった?

 どちらにしろ、大きな声で何か叫んでくれても……――こんな人混みじゃ、叫んだって聞こえない、か。


「樹里!樹里ぃっ!」


 人混みの中で叫んでみるけど、返事はない。

 今来た道を引き返してみよう。樹里がいるかもしれない……っ!

 押されたり、足を踏まれたりしながも今来た道を引き返す。


「ぷはぁっ……!」


 しばらくして、人混みの中から抜けた。目の前には、先ほど樹里が注文をしていた林檎飴の屋台。


「おやおや、さっきの子かい。イッヒッヒッヒ」

「あ……あの、おばあさん。さっき林檎飴を注文した、私の友人を見かけませんでしたか?はぐれちゃったみたいで……」

「イッヒッヒッヒ。見たよ」

「本当ですか?!どっちに行ったのか教えて下さい……!」


 私はただ、必死だった。でも、この林檎飴のおばあさんが樹里を見たと知って安心した。