「ジッとしてろよ?眼球って傷付きやすいんだからさ」

「ん゙ぅ゙ーっ!」


 バタバタと抵抗してみても、ほどけないロープ。

 身体の一部を、こんな形で失ってしまうなんて嫌だ。考えたこともない。

 助けて!助けてぇっ!


「暴れるんじゃねぇ!横にいる女みたいになりたいのか!」


 ぱちんっ。平手打ちをされた。

 男は怒鳴ったのに、それでもだれも助けてくれないのは、夏祭りの騒ぎのせいだ。

 外で楽しそうに騒いでいる声のせいで、男の怒鳴り声はかき消されているんだ。


「っ……」


 抵抗するのはやめて、私は男の目を見る。ギラギラと、獲物を追い詰めるような目。

 恐怖で溢れてくる涙。涙で、視界にうつるもの全てが滲んで見えた。

 ただ分かるのは、銀色の器具がキラキラと光り輝いているということだけ。その光りが、徐々に近付いてくるということだけ。

 そしてついに、右目の視界いっぱいに、器具のキラキラとした光りだけが満ち溢れる。


「ははっ……いい子だ」


 男がそう言った刹那、銀色の器具が、眼球の横の隙間に入っていく音がした。



 つぷっ。



 【りんごあめ】

 END.