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「ホントに大丈夫なの?あたしと暮らすと、お仕事進まないんじゃない?」


「大丈夫さ。俺も一日中デイトレードで株価見てるけど、休む時間もあるしな」


「そう?だったらいいんだけど……」


 理恵子は言葉尻に含みを残しながら言った。


 一緒に暮らすということは、互いに譲り合わないといけない。


 それは分かっていた。


 成熟した人間同士として。
 

 俺自身、今年十月発売の電子書籍の原稿は仕上げていたのだし。


 出版元としても、情報商材の書籍は紙、電子問わず欲しがっていた。


 特に俺のようにその畑一筋で儲け続けてきた人間の本は貴重だと思えるのだろう。


 誰もが二千円ぐらいなら出し惜しみしない。


 何せネットビジネスの寵児(ちょうじ)が書く本なのだし。