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 都内にも涼しい風が吹き抜けていた。


 部屋にいる俺ですら、季節が変わっていくのを感じ取れている。


 相変わらず冷水シャワーを浴びていたのだが、そろそろ温度を上げて、通常の秋冬のそれである四十一℃ぐらいに設定してもよかった。


 やはり恐怖感は続く。


 だけどテレビを付けても、最近、自殺Tubeによる自殺の撮り残し事件は報道されていなかった。


 それにあのソフトは悪評が高かったらしく、パソコンのアプリケーションのメーカーには苦情が殺到し、製品も販売を終了しようとしている。


 心のどこかで安心しているのだった。


 もうあの霊の猛威には関わることがないと。


 俺自身、高を括っていた。


 毎日、家の中で作業しながらずっと過ごす。


 直(じき)に九月も来るだろう。