俺はそういった頭の古い人間に愛想を尽かして、実家を出たのが本音だったが……。


 だけど俺にも彼女がちゃんといる。


 マンション近くのスーパーで働く小陽(こひなた)理恵子だ。


 彼女は毎日パートで働いていて、決して無理な労働をしないタイプだった。


 俺は理恵子がいつも仕事の終わる午後四時過ぎに、彼女のケータイに電話を掛ける。


「今、アイツどうしてるかな?」と思って。


 大概、仕事が終わった頃で電話が取れずに、留守電に切り替わることが多かった。


 メッセージを残して切った後、溜め息をつく。


 俺は引き続き、立ち上げていたパソコンをネットに繋ぎ、株価を見続けた。


 常に売れ筋の株は大口で買う人が多い。


 俺も高値になりそうなものは買い揃えていた。
 

 俺はまかり間違っても、ドカタなどの肉体労働をしたいとは思わない。


 高校中退の俺にとって、出来る仕事は今やってることぐらいだ。