「陸、ごめんね。私のせいでイヤな思いさせちゃって。」


遠いところを眺めたままの陸。

お姉さんのこと、気になるけど聞けない。


少しの沈黙の後、優しい笑顔がこぼれる。



「俺を選んでくれてサンキューな。放課後迎えに来るからゆっくり寝とけよ!」



怒りを感じさせない笑顔。



「うん。じゃ、またあとでね。」



誰もいない保健室に2人の会話が響く。


カーテンを開け、立ち止まる陸。


「なぁ、ひとつ聞いていい?…お前、車酔いすんの?」



陸がニヤリと笑う。




「ふふふふ…するわけないじゃん。車大好き!へへへ。」



布団で顔を半分隠しながら言った私に、


陸は、ちょっと眉毛を下げながら笑った。





「ば~か!お前、天才!!」



陸の『ば~か』は心地いい。



ずっと聞いていたい。

これからもずっと。