目の縁に涙を溜め震えながらも、チェルシーは泣かなかった。 痛々しい彼女を見ながら、アルスも涙をこらえることに必死だった。 そんな時、ゆっくりとドアが開く。 あるわけもないのにマイラスではないかと思ってしまった。 希望を抱えて顔を上げてから後悔する。 そこにいたのはマイラスとはまったく違う、厳つい顔をした長身の青年だった。 「何か用か」 さっきの出来事が無かったかのように、チェルシーはいつも通りの応対をする。 後ろ手に回した手が血の気を失っていたことはアルスしか知らない。