すると彼女はすぐに店の奥へ引っ込み、小さなキャンバスを持って戻ってきた。
思っていたよりもずっと小さいが、常に持ち歩くのならこのぐらいでちょうどいい。
今日はあの青年はいないのだろうか。
店の中に視線を巡らせてみたが、昨日見た赤茶色の髪は見当たらない。
「ありがとう。昨日掴みかかってきたあの人にも、そう言っておいてくれ」
「言っただろう、ハイゼル」
チェルシーの口元がいたずらっぽく歪められる。
「一人につき、願い事は一つだけだ」
まさかそんな屁理屈を言われるとは思っていなかったので、自然と笑みがこぼれる。
昨日の記憶の中から、彼女の名前を掘り起こして。
「ありがとう、チェルシー」
そう言って彼は、晴れやかな笑顔で店を後にした。


