わたし、曽我部 リおは恋を知らない。
知りたいと思ったことすらないくらい
で、みんなに好きな人や恋人がいると
きでも、興味を抱くこともなにもなく
過ごしてただいま、花の女子高校一年
生だ。わたしは中学でやっていた合唱
を高校に入っても続けたいと思ってい
て、合唱部の見学なう。


「入部希望者は、そこの紙にクラスと
名前書いて見学して」


部長さんが団子のように固まっていた
新一年生に優しく声を書けてくてるの
を他人事のように見ていた。
目にはいるのは、女の先輩ばかりで男
の先輩は一人もいない。
ピアノではなく、CDを流して歌って
をくり返している。


「つっまんねーな」


ポソリと漏れた独り言。
近くにいたツインテールが似合う女の
子がビクリと体を震わせてこちらを見
た。目はうるんでいて、今にも泣き出
してしまいそうな雰囲気。


「聞こえちゃうよ?」


耳元で囁かれたのは、小さい震えた声
で、ああ、優しい子なんだと思った。
わたしのことも、この部活のことも考
えて気をつかっている。
きっと、人見知りだろうに勇気を出し
て話しかけてきてくれた。


「ん、気をつける」


そう言うと、満足気に笑って他の友達
の会話の輪に入ってしまった。
揺れるツインテールを見ながら、先輩
たちの様子を見ると、キャピキャピと
喋っていて部活をしている雰囲気はな
い。ぐだぐだうだうだと時間が過ぎて
一年生もこの雰囲気に流されてていて
ひかえめだった話声が大きくなりつつ
ある。やめよう。
さきほど書いた名前を真新しい消しゴ
ムで丁寧に消していく。


「じゃーね」


ツインテール少女に一言かけて、部屋
から出る。これで入る部活がなくなっ
てしまったから、これから見学しなけ
ればならなくなった。