特急成田エクスプレスが、
成田空港駅に到着したその時。
事件は起こった。

狐がさも、当然、という風に、
私の手を握った。
男の子らしく、大きい手。
親指の付け根のふっくらした部分が妙に力強い。

狐の手に包まれた私の手は、
ほっそりして見えて、
私って、女の子なんだなぁ、と実感する。

その実感が心地よくて、繋ぎ目を見つめていたら、
ふと狐と目が合った。
狐の、仏頂面の、口元が揺れた。
唇を突き出し、
目を逸らして、
舌打つと私の手を放し、

「シン、おまえ、捕まえとけ」

狐は照れたようだった。