サグラダ・ファミリア

「さっきまで隠れてた通路の陰じゃ、
 手でくまなく調べられて、終わりなんだね」

だからこうして、今走って居るんだ。


「あと少しだ」

狐が声を張上げた。

建物の広く開かれた入り口が目の前。



私は足に激痛を感じ、転んで額と鼻と口、
腕の裏と膝をザラザラと擦った。

巨人の指が、私の腿を掴んでいた。

「もうだめ・・・」

痛みの中呟くと、狐は私の上に被さった。


私の身体を包み、守りながら、
狐は火を放った。

巨人の指の力が解けた。


狐の腕が、私を力ずくで起き上がらせる。



私は泣きそうになりながら、狐に頼りきっていた。

とにかく、前へ前へと肩を支えられ、進む。


私と狐は建物に滑り込んだ。

足を引きずる私を、
横抱きにして、狐はさらに、
建物の奥へと進んでいく。


「平気か?」
「痛い・・・」
「・・・痛いか」

辛そうに、狐が応えたので、

「へへ、お姫様だっこ」


咄嗟に強がってしまった。

逆効果、


狐は眉を下げた。

ぐっと、私を抱く腕に力が入り、
狐が憤っているのがわかった。