サグラダ・ファミリア

血の気が引いて、今すぐ、安全な所に行きたくなった。

でも、私はオトリ。
ここに居なければならない。



こんな危険な場所に、震えながら、
居なきゃならないほど、
私はオトリとして、頑張らなきゃいけないの?
未来のない私が、未来のために。
メシア誕生のために。
メシアって何なの。軽い気持ちで関わったくせに。
怖いくせに、どうして我慢してるの。

考えても仕方がないことを考えてしまう頭を、
叱って、とにかく身を守るために、
巨人の視界に入らぬよう努力する。

後ろに気配を感じて、振り返ると巨人と目が合った。

3歩先に、迫って来ていた。
巨人はぶよぶよの、粘土のような、
固い幼虫のような肌をしていた。

象が人になったら、こんなだろうか。

目には長い睫がビッシリと生えていた。
目やにが酷い。


こんなに観察が出来たのは、
逃げる気力がもう、なかったため。
頭が真っ白で、動けない。
・・・ああ、殺される。

私は運命を呪いたくなっていた。


私はどうして、生霊なんだろう。
どうして、ここで死ななきゃならないんだろう。