サグラダ・ファミリア

ふっ、と炎が消えた。
巨大化していた狐の姿も消え、ヒヤリとしたが、
ただの電池切れだったようで、

狐は小さな姿で、巨人の足元をすり抜け、
巨人の一団から距離を取って、私の元に来た。


巨人は狐火から解放され、喜びの声を上げている。

鼓膜と、肺をビリビリと揺らす騒音。
迫力ある大太鼓の演奏を、
すぐ傍で聞くような、音圧に意識が遠のく。


巨人達が動き出した。大きすぎる一歩。


ズシンという音。
一人の坊主が潰された。


潰されたといっても、巨人に実体はないので、
巨人が足をどけた後、
倒れている坊主の身体は無事だった。

しかし、その坊主の霊的存在が、消えている。


あの坊主はもう、無力だ。気を失った坊主の鼻から、
つーっと鼻血が垂れた。
そして、黒い血がどっと身体から溢れた。

『ザビエルさん?!
 ザビエルさん、どうしようあの人、
 どうしよう、
 血が出てるの?!
 死んじゃうの?!』
『霊体は殺されましたが、肉体は生きています、
 ・・・ゆうこ様、どうか御気をつけて、
 貴方には肉体がございません!』


巨人に潰されるのは、霊体。

他人の惨事に出遭っての、動揺がふっとんだ。
何か、心の中にある、電気を消されたような、
静かで冷たい、理解。


私があれを食らったら、死ぬ。