サグラダ・ファミリア

狐は一瞬、消えたように見えたが、
巨大化しただけだった。

巨人が人なら、大型犬の域。

獣は巨人の咽喉に、噛み付いていた。
『今ですね』
ザビエルさんが声を上げ、
シンが席を立った。

乗客は既にほぼ降りており、
乗務員達が、不思議そうに、
まだ降りていない私達の一団を見守っていた。

狐の巨大化に、巨人達の意識が逸れた隙をついて、
私達は走って、空港へ逃げ入った。


空港の大きな窓から、巨人に囲まれた狐の姿が見える。



「狐!」

声を上げ、窓に張り付いた。


『本体方、ご無事ですか?!』
『大丈夫』
「シン、何が起こってるの?!
 私はどうすればいいの?!」
「夕子、落ち着いて、
 君は俺が守る」
「狐さんはどうしたの?ゆうこさん・・・!」

「戦ってる」

「・・・」
荷物を整理するための、椅子が置かれたスペースで、
私達は呆然と、窓を見ていた。
着いて草々、こんな苦戦して、これから先はどうなるの。


『さて、我々も向かいましょうかね』
『ええ、御本体陣をお届けしましたし』
『あれは一度追い払わないと、
 身動きが取れませんしなぁ』

坊主の代表、ザビエルさん、坊主の一人、
と会話が続き、皆がいそいそと元来た道に流れて行く。
外に出るつもり?どうやって?

ザビエルさんが、深刻な顔を作り、
客室乗務員に声を書けた。英語の会話が始まった。

「何話してるの?」

白髪に聞くと、白髪はうーんと考えてから、


「飛行機に良くないものが憑いてるけど、
 祓いましょうか?みたいな」

噛み砕いて訳してくれた。

「・・・なるほど」
「あ、必要ないって断られた」
「そりゃぁ、そうだよね」

その時、巨人の一人が、飛行機に倒れこみ、
飛行機がミシミシと音を立て揺れ、飛行機の上の部分が、
圧力で少しだけ凹んだ。


乗務員が慌てて、声を上げた。
すかさず、白髪が訳してくれた。

「悪魔退治、お願いします!我々も祈ります!」