サグラダ・ファミリア

「駄目だよ夕子」


ハンカチを、夕子の顔に、ぎゅっと押し付けた。

「私達は、役割分担して、動いてるんだから、
 夕子が謝ることなんてない!
 私は夕子のオトリを、私なりに頑張って、
 担当してるんだから、謝られても困るよ!
 そりゃ、夕子は身体を持ってるし、
 シンに優しくされるし、
 大事にされる、・・・でも、
 私みたいな霊的能力がない」
「・・・」
「口を動かさなくても、会話できたり、
 目を開かなくても、ものが見えたり、
 人じゃない人たちと、関われたり、
 ステキな能力だと思う、
 私はこの力を使えるけど、
 夕子は使えない、不公平かな?」
「ゆうこさんっ」

夕子がいよいよ泣き出して、
私の肩を涙で濡らし始め、
私は周りに助けを求めた。

真後ろにシンが立っていて、
優しく夕子の頭を撫でた。

こんな場面だというのに、
私はこっそり、夕子を羨ましく思った。



夕子の涙が乾いた頃、
私達はまた、飛ぶ鉄の塊に、
その身を任せる移動を開始した。



「ゆーこ、手」

狐が再び、手繋ぎを要求して来たことは言うまでもない。