サグラダ・ファミリア

痛いのだろう、狐は顔を顰め、
少し涙目で、無言。
私がいる手前、
我慢しているようで、
口をへの字にし、
震えている。

『大丈夫?』
『うっせぇ』

狐の傷はみるみる塞がっていった。


「さァこっちは大丈夫だ、
 次は・・・」
『触るな』

治療は痛みを伴ったらしく、
狐は龍さんの手を叩き、頬と唇の傷の治療を拒否した。

「おやまァ、気難しいこった、
 野生動物だねェ」

龍さんは少し困った顔をしたが、
大人しく身を引いた。

狐は私の足のある座席、
私の足の横に腰を下ろすと、
車内を見渡した。

白髪の腿に、私の頭が乗っているのに気づくと、
白髪をギッと睨み、素早く私の身体を抱き起こし、
自分の腕の中に収めた。
意識のない私を見つめる、狐の顔は切なげ。
私の額にキスをし、ぎゅっとその身を抱きしめた。

「あのォ、恋人同士、か、なんかっすかね」

白髪が恐々と、声を掛けて来た。

「別に」

狐はそっけなく答え、私の身に傷がないか、
確認しに掛かった。
首の傷に気づき、一瞬怖い顔。


『ゆーこ・・・』
『ん?何?』
『噛み付かれたんだな?』
『・・・』


悪戯の見つかった子どものよう、
私の心は揺れた。


『ごめん、油断して・・・』


素直に謝ると、狐は顔を顰めたが、
白髪に何かをすることもなく、
その事実を受け入れてくれた。