サグラダ・ファミリア

『お願い、落ち着いて狐!』

『・・・、・・・落ち着く?今?
 この状況でか?!
 難しいぞ!
 その願い!
 どうして死んだ様に寝てるんだおまえは?!
 何されたんだ?!
 こいつらブッ殺す』
『ダメ、狐、鎮まって』

『無理だ、

 無理、

 
 怒りが治まらねぇ、
 


 おまえが傷つけられた』

『麻酔で気を失ってるだけなの、
 傷なんてつけられてないよ!』

長い長い沈黙。

『痛いところは・・・ないか?』

『ない』

『どこも?』

『どこも痛くないよ、狐、私は無事だよ』


『・・・』



狐が、ぐっと、唇を噛んだ。
感情と戦っている。

溜息。

道路に血の塊を、プッ、と吐き捨て、
前髪を掻き揚げると目を瞑った。

『こいつら、何だ?!』
『わからないけど、
 ワルイヒト達じゃない、と思う』
『・・・』

『龍さん』

「アイヨ」


『狐の・・・、傷の手当て、
 してくれたり、しない?』
「オォ、お安い御用さ、
 その狐さんが、
 暴れねェなら」

『狐』

『・・・』


狐は躊躇ったが、車の戸に手を掛けた。

狐が車の戸を開けると、
夜の涼しい風が、
車内を吹きぬけた。

「一時休戦と行こうやな、
 稲荷殿、傷を見せてくれ」

狐は車内に入りながら、
服を捲った。
黒い血でジクジクと濡れた傷口が、
バッサリと狐の身体を、
裂いているのがわかり、
心が痛んだ。

救急箱のようなものが、
出てくると思ったが、
龍さんは細く硬そうな手を伸ばしただけ。

「ッ・・・ぁ、くっ・・・」

狐の腹傷を、龍さんの手が撫でた瞬間、
狐は顔を顰め、座席に倒れた。
インスタントカメラの、フラッシュと似ている。
龍さんはパカパカと、フラッシュを連発させ、
狐の傷口を撫でて行く。