「お嬢さん、
 なかなか良いタマしてんなァ!
 ・・・、アイわかりました、手ぇ出しません、
 って言いたい所だが・・・!
 こっちだって命は惜しいゼぇ?
 なァお嬢さん、
 あの御稲荷さんの気ィ鎮めてくれや、
 でなきゃ滝で応戦するまでだァ」

落ち着きを取り戻しながら、
しかしまだ、愉快そうな龍さんの頬に、
無数の鱗が見えた。

ああ、この人、・・・龍だ。


とても、強い人だ。


生霊になってからの、私の感性は鋭い。
狐よりも上の、力の匂い。
狐を説得しなきゃ。

『狐・・・!』

反応なし。

「ソフィスティケイテッド!
 通信をさせてやれ」

龍さんが、白髪に声を掛けた。

「え?」

「このお嬢さん、
 御稲荷さんを説得してくれるってよォ」

「・・・ええ?!そんな、なんでまた?!」

「いいから結界を解けっていうのサ、
 四の五の言わずに、ホレ」

次の瞬間、耳に沢山の破裂音。
車の窓という窓が割れた。

『狐・・・!』
『ゆーこ!』

狐の声に、安心する。