「そうなんだ・・・」
静かに、シンは緊張した声を出した。
あれ?シン少し引いてる?
陰りを帯びたシンの顔は、病弱な青年の切なさを持って、
私の胸をきゅんとさせた。
「シン、不安なの?・・・大丈夫?」
シンの手に手を重ねた、その瞬間。

ぞっとするほどの、直感が体を巡った。

これはドッキリじゃない。

本当の受胎儀式。
目と鼻の粘膜がピリピリと電気を浴びて、
高熱に浮かされたよう、意識が薄れてはハッキリし、
何もかもに実感を覚えた。

受胎する。

私は受胎する。


本当に、神や、精霊は存在し、霊魂はある。


それが「わかった」感触。

夢の中で、
説明も受けないのに、その世界の規則を把握するような。

逃れられない試練が、今目の前に迫ってる。


緊張で体内から、石のような「気」が、
ぐっと押し寄せて来て、
胃が口から出そうになった。

咽喉に苦いものが広がる。

「シン、・・・」

今更怖いなんて言えない。今更逃げたいなんて。
でも、言い様のない、恐ろしさで手が震える。

昨日まで、こんな異質な現実とは、
無縁だった。

パスポートを持って来た母親の顔は、
半笑いだったのではなく、泣きを堪えていた。

どういうことだろう。
家族ぐるみで、運命が隠されていた。
目の奥が痛いと思ったら、涙が勢い良く出ていた。



ドッキリだったら良いのに。

これが、テレビのドッキリなら。


違う、と心の底で「わかって」しまった癖、
まだ正常な世界から、離れたくなくて願う。

嫌だ。怖い。怖い。怖い。

失敗したらどうしよう。
痛みは伴うの?私にできるの?