私の特別な視力が、それを把握してからというもの、
私はもう、車道に気を失い、倒れている狐にばかり、
意識が行っていた。
狐は、消滅したんじゃない、
あの水柱に、吹き飛ばされただけ。
早く回収しないと。あのままだと、轢かれてしまう。
何より、酷い傷を受けていたはず。
でも、身体は動かないし、強いお侍さんが居て、
私の希望とか、叶いそうもないし。
お願いを聞いてくれそうな白髪は、
狐を嫌がっていた。
どうしたら・・・!
どうにかしたい!
『龍さん・・・』
口が動かないから、脳内通信で、
声を掛けてみたが、返事がない。
届いたの?
届かなかったの?
『誰だ』
龍さんの声。
『貴方の後ろで、死にかけてる女です』
『あァ』
龍さんが振り返った。
『死ぬことァネェ、麻酔されてるよゥなもンだ、
ソフィ・スティケイテッドは紳士な吸血鬼だァな、
身動き出来ネェで不便なのァ可哀想だが、
今暫くの辛抱だ、堪忍しておくンな』
『お願いがあります』
『オレぁ雇われだ、
聞けねェな、
そこの恰幅の良い南蛮人が主犯さァ、
相談すんならアッチに声掛けな』
『・・・わかりました』
そうこうしてるうち、車が走り出した。
ちょっと待って。
私が焦った途端、大きな手にぎゅっと掴まれたように、
車が動かなくなった。
龍さんが、オ?!と上を見た。
肥満の運転手はプーッ、とクラクションを鳴らした。
その音が頭に響く。
負けるものか。
『ちょっと待って下さい』
『誰だ』
『後部座席の女です』
運転手が振り返った。