「よく聞いて?」


シンの大きく、漆黒の、つぶらな瞳が、
チラチラと揺れて、私を見ている。
やっぱり、カッコイイなぁ。
こんなカッコイイ男のコに、大切にされる夕子はいいなぁ。


「ふ?」


ギリギリ、返事ができた。


泣くのを堪えているせいで、声が上擦った。


「言い方が良くなくて、
 誤解されてる気がするから、
 弁解する、
 俺は俺のことや、
 狐のこと、
 ゆうこさん、ザビエルや他の、
 戦士全部、
 平等に、夕子を守る役目の人間、
 として見てる、
 それで、極論として、
 夕子が無事なら、
 いいって、言ったんだ、
 最悪、
 俺達は我が身を、
 犠牲にしてでも、
 夕子を守る・・・、
 そういう意味で・・・」

「勝手に言ってろ」


狐が不機嫌に声を張上げ、
輪から抜けようと身を傾けた。

「狐・・・」


シンは問題児を抱えた、
教師の顔で狐を見た。

狐は私の肩に手を置き、シンを睨んだ。
それからぐるりと、
話し合いのために、
円になっている一同を眺めた。

「おまえ等全員、そっち守るんなら、
 俺は・・・こっちを守る」


「わ、・・・たしも!」

何故か夕子まで、私の肩に手を置いて、
名乗りを上げた。
ザビエルさんが困ったように、
シンと狐を見比べている。

私のせいで、グループが分裂しようとしている。


シンと目が合った。
助けを求めるような顔。

シンの瞳は、相変わらず揺れていて、
何かを必死に、伝えようとしていた。
シンは私を、どうでもいいなんて、
思ってない。
ふいに、「わかった」。
シンは巧く、言葉を操れなかっただけ。

直感だったが、確信した。

シンを助けたい。


急に強さが、足の裏から全身を、
突き抜けるようやって来た。


「ありがとう、・・・二人とも、
 でも、大丈夫、
 私は・・・、私の身ぐらい、
 自分で守るし、
 ちゃんと戦士として、
 やっていく覚悟があるよ・・・?
 だから、あっちを守るとか、
 こっちを守るとか、言わないでさ、
 皆で、協力しよう」

私は狐と夕子に、にやりと笑ってみせた。