無理もない。
異国で、危険に何度も遭遇したら、そう思う。
けど、自分でここに来たじゃない?
私は私にできることを、私に期待されていることを、
やってみたいと思う。

「今帰ったら、ここまで来た意味ないじゃん」

「でも、メシアとか受胎とか、ふざけてるよ・・・、
 関係ない・・・、
 私・・・、
 別に良いと思う、
 メシアなんか現われなくても・・・、
 受胎なんか、・・・したくないよ」


「怖がり」
「・・・っ」


言われたくない、言葉のはず。
私が言われたら、むかついて睨んじゃう。

案の定、夕子は睨んできた。


「怖がり」

繰り返すと、夕子はきゅっと口を結び、
シンの方を見た。

「ホテルへのバス、そろそろ出るよ!
 急ごう!!」

単純なコだなあ。


『おまえだ、おまえ』



一部始終を、見守っていた狐の突っ込みを無視する。