私の手はみるまに、細くなって行き、
私の体は、私に戻った。

「狐・・・」

狐が心底、ほっとしたような溜息を漏らした。

ありがとう、と言い掛けて、
目の端に、もう一人の私が、
嬉しそうに意識の戻ったシンを抱き起こすのが見えた。
「私、シンのこと、好きなのかなぁ?」
「あ?!」
瞬時に胸が黒いもので、一杯になってしまった。


邪魔をしたい。

私の姿をした、私じゃない女のコが、
シンと仲良くしているのを、見たくない。
「元妻の魂に惹かれてるだけだろ」
「・・・でも、なんか、凄くむかつくぅ・・・!」
「あのなぁ、俺だってお前の妻、 
 やってんだからな、ええと、千年、
 ぐらい前、フランスで・・・」
「ふーん」
「真面目に聞けよ!」

『ゆうこ様、シン様がお話があるそうです』


ザビエルさんの声。



よくよく見渡すと、空港の中は、
嵐の通り過ぎたよう、乱れていた。

・・・。


突風でも吹きこんで来たかな?


深く考えないようにして、シンに近寄った。
シンは疲れたような、笑みを浮かべて、
まず、頭を下げた。

「急にいなくなって、ごめんね」