彼女はワタシの妻なのだ。
ワタシ達は愛し合っている。

ワタシの感じる幸福で、私は目が回っていた。



体が動かない。


私の元の体とは、似ても似つかない体。
意識が遠のいて行く。
日本はどこにあるんだろう。
帰りたいけれど、もう駄目だ。

私はここで終わり・・・。



「待て・・・」

聞き覚えのある声に、薄れ掛けた意識が少し戻った。
狐がワタシの前に、立っていた。
「おおぉ、狐!
 会いたかった!
 元気そうだな」
「おまえはゆーこだ」
「・・・」
「ゆーこ!」
心地良い。私を求める声。
私に戻りたいよ。
「ゆーこ、俺の声が聞こえるか?
 落ち着いて目を覚ませ、
 おまえなら勝てる、
 テオは妻を前にして、
 ちょっとおかしくなってるだけだ、
 おまえを乗っ取る気持ちはない、
 テオの意識を仕舞え、
 できるだろ、
 戻って来い、
 俺は、・・・ずっと、もう・・・、
 何百年も・・・、
 テオを思って来たけど、
 でも、今は・・・、
 
 おまえと会いたい」


狐・・・。



腕の中の女性を、解放すると、
女性は哀しげに、シンの体へ吸い込まれて行った。
ぎゅっと暖かな狐の大きな手が、
私の腕を掴んだ。

あったかい。